北インド(ラジャスタン)を発祥の地とし、西へと流れていったジプシー。
彼らのルーツであるインドのバンド、東欧のルーマニア、マケドニアのバンド、
欧州西端の国スペインのジプシー・ミュージシャンをブッキングしたジプシー・キャラバンツアー。
そのドキュメントである映画『ジプシー・キャラバン』。
このプロジェクトは、ジプシーたちの歴史と足跡を明確に視覚化した。
映画の中ではマケドニア在住のエスマが、ビッグママ的な存在として大きく扱われていたが
(それは別にわるいことではない)、サントラの中でバンドは等しく扱われている。
サントラでは、独自にサウンド・プロデューサーが立ち、全体を構成し直している。
それが素晴らしい結果を生み出した。
アルバム1曲目は、北インドから西に流れ、ヨーロッパの最西端のスペインでフラメンコとなった、
そのアントニオ・エル・ビバ・フラメンコ・カンパニーの曲。
掻鳴らされるフラメンコギター、絞り出すような声、歌、床を踏みならすステップの響き。
目の前に彼のダンスが浮かんでくる。
このツアーで5つのバンドは、音楽を通して互いの存在を初めて身近に感じた。
ツアーの終盤、かれらは見事なコラボレーションを見せる。
映画の中でもハイライトとなっているその曲も、もれてはいない。
映画を観たものとすれば、映画館の中では音質的に十分ではなかった彼らの曲と演奏が、
素晴らしい状態で聴けてうれしい。
映画の中でインサートカット的に扱われていたもの
(若きエスマのヒット曲「ロマノ・ホロ」とマハラジャの「マロ・ジャイロ・リミックス」)が
全曲収録されているのでさらに嬉しい。
映画では他の曲とつながって1曲になっていた超高速唇ラッパが怒濤のブラスサウンドに変わる
Fanfare Ciocalinaの「Hora cu Strigaturii」も、独立した曲としてきちんと収録されている。
このサントラには、24曲のトラックが収められているが、
その中にミュージシャンたちが演奏の合間に響かせた音や、
ビールのボトルを叩いて即興的に作った曲、彼らの囁き声、
フラメンコダンサーの激しいステップ、街のざわめき、子供たちの歌、
結婚式の宴の様子などを録音したショートトラックが、7曲収められている。
それらが、ジプシー・ミュージシャンたちの演奏の合間に、
絶妙のつなぎとして挿入され、独特の味わいを生んでいる。
さらに彼らがこれまでリリースしたアルバムの中から
映画の趣旨や流れに沿った曲もセレクトされている。
アルバムラストをしめくくるのは、
映画の中でエスマが黒い喪のヴェールをまとって熱唱した歌。
CDには、デザイン処理も見事な24Pのオールカラー・ブックレットがついている。
国内盤には、1枚のライナーノート付き。