常にスケジュールに追われ、超高速の交通機関で遠距離を短時間で移動し、質よりも量を問われる時代風潮の中で、スピーディー&迅速が最も価値あることだと信じ切っているせっかちな我々現代人にとって、なかなか結末を知らされない物語というのは、時に苛立たしく感じられるのかもしれない。だが、西洋の古典的な長編小説もそうであるように、スケールが大きければ大きいほど、そして最後の大詰めが劇的であればあるほど、作者は想像力を強く喚起され、そこに至るまでの緻密な過程や背景描写、登場人物一人一人に関わるドラマを、熱を込めて描きたくなるものである。このジパングの作者も、おそらくそのような誘惑に勝てず、ついついページ数と時間を割いてしまっているのではないかと思う。
読者の側からすると、確かに「引っ張るなあ」という印象も否めないが、別に中身が薄っぺらとも思わない。むしろこれだけ長くかけて、大和潜入と周囲の状況の経過を精確に余すなく描こうとする作者の緊張感の持続と、相変わらずリアルな臨場感の高い描写力とに感心する。(少なくとも他のマンガに比べると)非常に精度の高い構成力がこの作者の本領であり、結末の構想も当然ながら既に用意されていることと思う。
だから読者は、先を急がず、むしろ作者とともに想像力の海にたゆたいながら、いま物語の中で展開されてくる様々な個々のドラマをゆっくりと楽しめばよいのである。地道に辿るべきプロセスを差し置いて結果のみを先取りしたがる人は、そもそもこのようなスケールの大きな物語を読むのに不向きだといえる。