もう日本盤は発売されずわが国では消えていく映画になってしまうか、と思っていたらめでたく再発売、陰気くさくとっつきにくい印象だったジャケットもスター映画らしいジャケットに変更されて再登場です、
ワイド画面を縦横に使ったアクション映画であり、歴史ミステリー・スリル・スペクタクル、そしてロマンスまでと娯楽映画の王道作品です、みどころは、地面ではねる雨粒の一つひとつまで確認できるハイスピード・カメラ撮影によるアクション(劇前半はマーク・ダカスコス大活躍)、3世紀前を強調した色彩ゆたかな画面作り、もちろん本家フランスによる当時の貴族生活描写、おまけにモニカ・ベルッチの全裸シーンあり、大規模な狩りシーンも印象深い、こんな演出を見るたびに人馬を集めるだけ集めて落馬シーンばかり見せた黒澤「影武者」の頓珍漢ぶりを思い出します、
以下、獣事件の顛末にはふれない解説を少々、
劇はフランス革命が地方にも波及してきた1789年の秋もしくは冬に主人公の一人であるジェヴォーダン地方領主である侯爵が事件が起きた1764年〜1767年を回顧する物語、 映画冒頭は侯爵の居城に革命派が迫り執事が侯爵に退去を促すシーンから始まる、長い回顧シーンで事件の経過が語られた後、いよいよその時を迎えた侯爵は自ら己一人で「貴族はギロチンだ」と叫ぶ貧しい愚者たちばかりの革命派市民の集まる城外へ進みでる、そのとき侯爵の脳裏には事件後「アフリカへ行かないか」と誘ってくれた一緒に事件解決に立ち向かった博物学者が船でアフリカへ向かう姿が浮かぶラスト・シーン、 私けっこう感動しました、
フランス革命の悪逆非道については見る人それぞれ勉強してもらうとして、いまだに日本の一部ではフランス革命礼賛が続いていますが本国フランスをはじめとして世界的にはフランス革命とはとんでもなくひどいことをした歴史の汚点の一つと認識されています、それが本作の隠し味のようになっており、事件の謎解きに触れずにヒントになる言葉をあげておけば、博物学者・啓蒙主義・ヴォルテール・無神論つまり革命賛成、たいしてキリスト教、歴史有る封建制度と貴族・領主となります、理性がすべてなのか、人智を超えたものを認めるか認めないかという大きなテーマが隠し味なんです、
サイモン・シャーマ著「フランス革命の主役たち」下巻の次の描写が本作の参考資料だったことは疑いありません、「24名の僧侶一行は監獄に着くと即決裁判でおざなりな尋問後、庭へ出るとそこには血に飢えた群衆が手に手に短剣、斧、手斧、長剣をもって、ゴダンという名の肉屋などは大工ののこぎりを持って待ち構えていた、1時間半の間に一行のうち19人がめった切りに切り殺された」、本作では暗示されているだけの場外に引き立てられた侯爵の末路がこれなのです、侯爵役の俳優は最後の最後ににじつにすばらしい表情をみせていることがわかるでしょう、
ブライアン・フェリー「オリンピア」のジャケットを見たとき、どっかで見た記憶があるなぁと思ったのですが、本作の1シーンの引用だったことに気付きました、