遺伝子工学やバイオゲルなる人工細胞が発達した未来。事故で体の大半を損傷した17歳のジェンナは、医師である父親の越権行為で新しい存在として再生。
自分のことが思い出せず、両親の用意した幼児期からのヴィデオを見ながら、記憶を取り戻してゆくが、味はいっさい思い出せず、栄養ドリンクをとれるのみ。
かつての抗生物質の乱用、遺伝子組み換えのあげくの自然破壊、人体への大きな影響を反省して、エコロジーを重んじ、遺伝子工学や再生技術のひとりあたりの利用ポイントの上限が決められている世界です。
ジェンナは発覚を恐れた両親の手で、気候の温暖なこの田舎に隔離されるかたちで、学校にも通いつつ、しだいにいろいろなことを思いだし、また謎につぎつぎ突き当たります。友達との関わり、親に文字通りプログラミングされたこと・・・
親からの支配、自分の身体へのとまどいなど、思春期らしい悩みが、脳とコンピュータというSF的設定と絡み合わせられています。サスペンスなので、明かせませんが、中心のアイデア自体は、すでに40年前に手塚治虫が「火の鳥」でやっているし、心理面もタニス・リー、エイミー・トムスンなどSF界の女流が書きこんでいますし・・・その部分はちょっと賞味期限が古いかなという気がしました。
時代が進んだぶん、そうした技術に対する、新しいとらえかた(評価という意味ではなく、別の角度からの解釈)も入っていてほしかった。
ラストの着地点も、飛距離が意外にのびなかったと思います。日本の少女漫画を読んできた目には、既視感があります。
しかしソローの『森の生活』と組み合わせられた自然描写や、医師でありながらノスタルジックな価値観を体現する祖母のリリーに重みがあり、ふたりの親友の運命ふくめて少女の生活のリアル感はうまくまとめられています。YAという角度からは、なまなましく読ませます。
そういう意味では、昔はSFという囲いの中で展開されていたアイデアストーリーが、日常のティーンの世界に下りてきて、みんなに認知され、一般化したということなのかもしれません。
この手のアイデアを初めて読むティーンなら、忘れられない体験になることでしょう。