この話は現時点ではよしながふみのBL最高傑作じゃないんでしょうか。
始まった時にはこんな話になるとは誰も思っていなかったと思います。
もうハンカチ持って読んで欲しい。自分は何度読んでも最後のあの場面で泣けて泣けてしょうがない……。
没落した貴族の息子と大人気ポルノ小説作家は男娼と客として出会う。
貴族の誇りしか持たない少年と、貴族の誇りを憎む青年は、しかしやがて主人と従者という関係になり、やがて家族へ、そしてそれ以上の存在にへと変わってゆくが、二人に襲い掛かってくるのは容赦ない時代の荒波だった。
執事の分際から続く似非フランス革命(と勝手に呼んでいる)ものですが、この話、BLの皮をかぶった真っ正直なビルディングロマンです。
少年から青年へ、素直に、まっすぐに育ってゆくジャックの、その資質のすばらしさにも感動しますが、彼を雇い、育て、やがて彼を愛するようになるジェラールの、その心の動きが特に素晴らしい!!!
過去の手酷い経験から、貴族を憎み、愛を遠ざけ、復讐するかのようにポルノ小説を書き続けるジェラール。
その傷ついていた心が、再び愛をおぼえ、愛を知り、そして愛を受け入れ、自分を愛するようになるまでがもう本当に見事な筆致で書き綴られております。震えるほどに心に染みます。
激変した政治状況に暗澹たる心地で酒を飲む兵に、語りかけるジェラールの言葉が本当に素晴らしい。
愛を得ることによって他人を許すことが出来る。
そんなジェラールが笑えるようになったことが、本当に嬉しく―――喜ばしく思う。