〈帰還軍人のためのモデル・ハウス展〉で上演されている
アトラクション劇を、観客席から注視する、コックリル警部。
実は公演の前に、劇の関係者三人に不気味な死の予告状が届いていたのだ。
そしてその予告通り、“ジェゼベル”と仇名される悪女が、何者か
に絞殺され、張りぼての塔の上から墜落するという事件が起きた。
現場である舞台の表では、何千という観衆が見守り、裏では錠
のおりた唯一の扉の前に張り番がいたという完全なる密室状況。
容疑者は、舞台上で騎士の扮装をしていた数人の男たちに絞られるのだが……。
騎士の扮装することで顔や体つきが隠せるため、犯人は、
役者と入れ替わっていたのではないかというのがポイント。
それについて徹底的なディスカッションが行われ、可能性を虱潰しにしていく
のですが、いっこうに解決がみられないため、煮詰まった容疑者全員が次々
に自白していくという破格の展開が秀逸です。
また、本作では、ジェゼベルの事件のほかに、首切り殺人も起きます。
二つの事件は、ある“小道具”によって密接に連関して
おり、その“小道具”を用いた手口こそが本作の核です。
もっとも、そのトリックに気づかせないブランドの見事な
ミスディレクションの手腕も、忘れてはならないのですが。