サッカー場で人々が歌う歌をチャントと言う。時に味方を鼓舞し、時に敵を罵倒する。その時スキャンダルの中にいる選手は格好の的だ。審判でさえも。アイドルのコンサートの揃った掛け声をバカみたいだと思うが、サッカーのそれは、よく似たものなのにそうは思わない。それは私がサッカー好きだからだろう(笑)。そのサッカー好きな私には、この映画は思ったほどサッカーが出て来ないと感じた。
しかし、だからこそ、スタジアムから溢れるチャントの声が天国的な響きを持って押し寄せる。 実際、イギリスでフットボールの会場に行って、まず身を震わすのは、開始前から人々が野太く歌い囃すチャントだと思う。会場に向かう道すがらからすでにその歌は始まっている。スタジアムに入ると、囲われた施設だから、尚のことその音は増幅される。今まで聞いたどんな楽器より、腹に響くサウンドではないだろうか。だから、会場にサッカーを見に行くことは、何にも増して重要になり、思い出になる。それが、イギリスのフットボールだ。
そんなファンが、お祖父さんから孫まで三代繋がって試合を見に行くのも珍しくない。シーズンチケットを持ち、さらにプレミアム会員になっている年配者は、試合前に専用の会場付設のパブで旧交を温め、話に花を咲かす。ニューカッスルであろうと、ロンドンであろうと、それは同じだ。まして、ニューカッスルならサンダーランドを。マンチェスターならエバートンを。トッテナムならウエストハムやアストンビラなど地域のダービーマッチ前なら、まるで騎馬戦をやるかのごとく、皆がテンションを高めて行く。一度英国に行くなら、ぜひどこのスタジアムでもいいから、サッカーを生で見て欲しい。これが英国の文化だからだ。
映画中、男も女も実に強い。相手の感情など考えず、ストレートに自分を押し出す。私がイギリスで通った学校でも、女の先生がいて、いつもガムを噛みながらだった。「ガムを噛みながらだと、発音がよく聞こえない」と私が抗議したら、「いったい、街なかでどれだけの人がガムを噛んでると思うの?それが聞き取れなくてどうするの!」と逆襲に合った。その強さが、問題を起こすし、その通りだ!と楽しくもなる。英国と、フットボールがいっぱいつまったこの北イングランドのお話を是非どうぞ!!