というのは、変な表現だが、誉め言葉である(これだから80年代世代は)。
非常に多岐にわたる論点を鮮やかなレトリックでまとめあげた数学の一般向け読み物である。
数学読み物は、ここ数年スマッシュ・ヒットを連発している分野だが、本書はその中でも
とりわけ優れている。
扱われている内容は、基本的に3つ。
1.群論の歴史的な解説(ガロワまでは歴史に重きをおいて、19世紀以降は数学的な内容に
踏み込んで)
2.美術・音楽に現れたシンメトリーの具体的な解説(アルハンブラ宮殿の文様やゴルドベ
ルク変奏曲について)
3.ある年度の9月から8月までの著者自身の研究者としての一年(生い立ちをフラッシュ
バックしつつ)
情感あふれる美しい紀行(シナイ砂漠、沖縄、グラナダ等々)を交えながら、以上の多岐に
わたる内容を一冊の本として非常に見事にまとめあげている。ところどころのハイブロウな
引用(ボルヘスの中国の百科事典、あるいは生物学者ランディ・ソーンヒルの研究)が、実に
スパイスとして決まっていて、表題の感想となった次第です。
これは訳者の富永星さんの仕事の見事さでもあると思います。
豪華なディナーをゆっくり味わうような読書でした。文句なしの楽しさです。