間もなく結婚を控えたバグダッドのシンドバッド王子(カーウィン・マシューズ)
は、婚約者パリサ姫(キャスリン・グラント)と航海中、コロッサ島にたどり着く。
シンドバッド一行は、その島で、一つ目の巨人サイクロプスの魔法のランプ
を盗もうとして追いかけられていた魔術師ソクラ(トリン・サッチャー)を救出し、
辛くも島を脱出する。バグダッドに戻ったソクラは、魔法のランプが諦めきれ
ず、シンドバッドの協力を得て、何とか島に戻ろうと画策し…。
『
バグダッドの盗賊 [DVD]』のようなアラビアン・ナイトの世界を映像化した
いと思っていたレイ・ハリーハウゼンが念願叶って放った「シンドバッド」シリ
ーズ第1弾。ハリーハウゼンの劇場作品としては、初のカラー作品であり、
複数のクリーチャー(怪物)が登場する作品でもある。日本劇場初公開時の
タイトルは、『シンバッド七回目の航海』。
洞穴から一つ目の巨人がヌッと現れ、蛇女が妖しいダンスを踊り、双頭の
巨大鳥のヒナが卵から孵り、ドラゴンが口から炎を吐き、ガイコツが剣を振
り下ろす…。それらの想像上のクリーチャーたちの姿に感嘆し、心躍らぬ
(子どもならば、おののく)映画ファンなどいるのだろうか。ハリーハウゼン
のクリーチャーたちの造形と動きに対する深い愛情は、一目瞭然。実際は、
小さな人形に過ぎないクリーチャーたちが、ハリーハウゼンの根気あるア
ニメート作業によって、意思と感情を持って自由に動き回る様は、文字通
り、魔術のようだ。口承や文字で伝えられてきたアラビアン・ナイトの物語
が、20世紀に入って、映画というメディアの力を借り、そして、ハリーハウ
ゼンという芸術家であり、職人でもある、類い稀な映像の語り部によって
甦ったことに感謝せずにはいられない。ハリーハウゼンの豊潤なファンタ
ジーの世界は、いつ観ても飽きることがないのだ。
クリーチャーたちの圧倒的な素晴らしさに押され、影が薄くなってしまって
いる感があるとはいえ、俳優たちも好演している。マシューズとグラントは、
若さ溢れる美男、美女のカップルで、爽やかで溌剌とした魅力を振りまい
ている。サッチャーの魔術師も、憎々しげでありながら、どこか人間臭い悪
役で、決してクリーチャーにも劣らない存在感だ。
本Blu-rayは、35mmマスター・ポジからHDテレシネ、レストアされたマス
ターを使ったもの。既発売のBOXからの待望の廉価単品発売だ。既発売
DVDとの最大の違いは、画角が、1.85:1から1.66:1へと変更になり、再
度、カラコレ(色補正)された点だろう。DVD盤に比べ、周辺の情報量が若
干増え、赤味がより強調された色調が特徴。場面によっては、グレイン
(フィルム粒子)がきつい所もあるが、フィルムの質感が味わえる良好な画
質だ。ただし、あくまで、製作年を考えると良好という意味で、新作のよう
なハッとする高画質ではない。5.1ch True HDの音声も不自然さがなく、
明瞭。
特典には、コメンタリー(ハリーハウゼン、フィル・ティペット、ランディ・クッ
ク、スティーブン・スミス、アーノルド・クナート)、ハリーハウゼンが同作を
語るドキュメンタリー”Remembering The Seventh Voyage of Sinbad”、
現役の映画監督、VFXマンがハリーハウゼンへの思いを語る”The
Harryhausen Legacy”、バーナード・ハーマンの音楽についてのドキュ
メンタリー、劇場公開時の宣伝曲(珍曲!)、ハリーハウゼン、シニア、マ
シューズが同作を語る”A Look Behind the Voyage”、ダイナメーション
の宣伝、ジョン・ランディスによるハリーハウゼンへの『
アルゴ探検隊の大冒険 [DVD]』
についてのインタビューが収録。
既発売DVDを持っていても、本作のファンであれば、仕様変更、特典の
点から買い換えるべきだろう。