著者の小説は『アメリカの夜』以来ずっと読み続けてきている。
正直な感想は、そんなにすごいのか、ということだった。
阿部の作風は「知的武装したスラップスティック」とも
呼べるものだ。だがこの「知的武装」のほうが、ハスミとか
批評空間あたりを意識しているのがみえみえで、たとえば
「ABC戦争」で「エクリチュール」なんて言葉が出てくると、
もういけない、ということになる。
本作にもあざといガジェットは色々とある。
パン、小麦粉、麻薬、米国、占領軍の話は
興味深いが、別にこの小説で読まなくても
いいように思う。
だが、地方の陰湿な利益共同体が、一部の人物の
「退屈」と「倦怠」から崩壊していく様を
ドタバタとして描き切る著者の筆力が勝り、
読者としては飽きずに最後まで読める。
阿部には、もうオシャレなんてせずに、この路線で
どんどん書いてもらいたい。