主人公の喪失感、疎外感、孤独感を描き切って
さすがの才人、TOM FORD真骨頂です。すばらしい
大人の映画ができました。
冒頭シーンからして観客の心をひきつける
衝撃的な構図から始まります。
テーマは、どうしようもない孤独と男性そ愛して
しまった初老の男の、16年にわたるパートナー
を失ったことによる、人生の崩壊と、偶然による
最期を描いています。
それにしても、いちいち丁寧映像表現。
ばたばたしたカット割りが多い最近の映画作品の
中にあって、ここまで、じっくりと腰を据えて
人間を魅せる作品は珍しい。
1960年代を完璧に再現した、ファッション、生活様式、
モードが見ていて釘づけになります。そして、ファッション
は完璧です。
音楽もいい。物悲しく、映像の底流を流れ続けるその
音色は、「何かを求める男」の、決して満足できない
喪失感の「一日」をうまく表現しています。
それにしても、コリン・ファースの名演には驚嘆します。
彼あっての本作品。アカデミー賞(候補)もうなづけます。
ジュリアン・ムーアも、退廃的で孤独な金持ち有閑マダムを
演じてすごいな、って感じです。
記憶に残りのは、色使い。全体のトーンはモノトーンなのですが、
主人公が貸金庫から全財産を引き出してロビーにいるとき、
目の前に、まばゆい青のドレスを着た、隣家の娘が立っています。
これに代表されるように、ときどきあでやかな原色をうまく使って
そのシーンの意味を倍増させる、という手法は、息をのむほど
すばらしい構図となっています。