心理学の実証的研究を行っている著者が、学術論文クラスの理論をおりまぜながら身近なことに焦点をあてた一般向け書籍です。
専門家がしろうと向けに書いた本というのは、当たり外れがあります。
本書は、手にとったときから良い印象を受けました。
まず、手にとってパラパラめくると、1ページあたりの文字数が多くなく、ところどころ図も入れてあるのに200ページもありません。一般向けにやさしく書いているのが分かります。
もうひとつ、著者の顔写真が裏表紙のカバー見返しに小さく載っているだけ、というのも感心しました。
著者が女性の場合、帯に大きく顔写真を載せることが多いなかで、この本は違う。内容で勝負しているかもしれない、と期待するに十分です。
そして、実際に読んでみたところ、内容は期待以上でした。
むつかしい内容を分かりやすく書くことに成功しているのはもちろん、書かれている心理術が今まで持っていた常識と正反対のものがいくつも登場するのです。
たとえば、「3人寄れば文殊の知恵は湧かない」。
「3人寄れば文殊の知恵」ということわざもあるように、違う経験や立場を持つ人が集まれば、1人で考えるよりも良い知恵が湧くように思います。
ところが植木さんは、心理学実験の結果から
「人は集団になると無意識に手抜きする」
との傾向を指摘します。
実際の会議でも、「たくさん出席者がいるのにいいアイデアが浮かばない」と感じることがありますが、これは、「たくさん出席者がいるのに」ではなく、「たくさん出席者がいるからこそ名案が浮かばない」ものなのです。
へぇー、そうだったんだぁ。
じゃ、どうしたらいいのか。
植木さんの答えは、常識的な回答とちがって意表をついています。
「へぇー」と「意外!」のかたまりのような本でした。