『シルミド・裏切りの実尾島』の訳者あとがきの「事件の真実に最も近づいている」かどうかは、それこそ大韓民国政府が資料を公開しない限りはっきりしないことである。また、著者本人もあとがきで述べている通り、ただでさえ口が重たい関係者が日本人に対してどこまで口を開いてくれたのかという点に少しばかりの疑問が残る。故に前掲書との細かなディテールの違いー例えば部隊員の構成などに関して言えばやはり軍配はやはりイ氏の著作にあげざるを得ない気がする。
しかし、その困難の中で取材をされた苦労には素直に頭を垂れるしかないし、前述したように「どっちが近い」かを比べることにはそれほど意味があることではないのかもしれない。
そして、何より強調しておかなくてはならないのは、著者が取材を開始したのが2002年であるという点だ。そう、この本は昨今の軽薄(はっきり言うとバカ)なブームや映画公開に便乗した本では聊かでも無いのである。そこを見誤るとこの本の持つ意味を大きく損なうことになる。タイムリーであったのは努力が報われたに過ぎないのだ。
惜しむらくは巻末年表の「朝鮮戦争」の項目がもう少し詳しかった方が「初めての人」に対してより親切だったのではないかという点でしょうか。