一応、殺人事件は起こり捜査されるけどそれがこの小説の眼目ではなく、殺人事件を巡って展開される哲学的考察が話の中心をなしており、それが面白いかどうかで評価が分かれると思います。その哲学的考察とは何かというと「多世界解釈」という題目で一言でいうと世界は無限のパラレルワールドで成り立っており、あることが起こっても、別の次元では起こっていない可能性も存在するということのようです(多分)。著者の言いたかったことは、それら全てを体験できない我々は幸福でもあり、且つ不幸でもあるとのことのようです。話も事件の解決より現実の適正化に集約されて終わるという特異な推理小説になっております。面白かったけど、あまり人に勧める気にはならないタイプの小説に思いました。
蛇足ですが、作中で披露される、タイムマシンを使って親を殺すと自分が生まれないけど、生まれないから親を殺すことができないという「タイムマシンを使った親殺しのパラドックス」には笑かしてもらいました。