9.11以後のアラブ某国を舞台にした舞台にした、超硬派なポリティカル・サスペンス『シリアナ』。
丁寧な説明も無いまま、ドキュメンタリー・タッチの短いカット割りで場面が切り替わり、
大義の傘の下で魑魅魍魎がカネや利権の周りをぐるぐる回ってどんどん遠心力を増していく。
世界中でいろんな奴がいろんな立場に立たされ、陰謀が渦を巻いていくので、
日本人で、1回だけ見て、話のディテールを最後まで追えた人はあんまりいないんじゃないかと思われる。
それを、非商業的で真摯な映画だと称えるか、不親切で上から目線の映画だと思うかは人それぞれで、
これだという答えなんて見つからないんだけど、
ここまで分かりづらいと、単に脚本や演出上のスキルの問題だったり、
そういう制作の姿勢そのものに問題があるんじゃないかと、僕は思う。
複数の登場人物が、それぞれの場所・時間・価値観の中を生きていながら、絡みあっていく――
そういう脚本は大好物なんだけど、最近はその意匠ばかりが先行していて、肝心のテーマがよく伝わって来ない作品が増えている。
イニャリトゥの『バベル』しかり、本作しかり、点が点のまま、存在感を示しきれずにしぼんでいってしまう……。
しかも、いろんな立場を描くから、粗も目立ちやすくなる。イスラム原理主義に傾倒する青年の話は微妙だった。
監督がかつて脚本を担当した『トラフィック』はまだ、明確に善悪があったから、この手法で良かったんだろうけど、
この映画にはそれが無いし、アクションも無いから、難しいなあと感じながら見た。