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ショーペンハウアー (Century Books―人と思想)
 
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ショーペンハウアー (Century Books―人と思想) [単行本]

遠山 義孝
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登録情報

  • 単行本: 254ページ
  • 出版社: 清水書院 (1986/08)
  • ISBN-10: 4389410776
  • ISBN-13: 978-4389410773
  • 発売日: 1986/08
  • 商品の寸法: 19 x 11.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 435,081位 (本のベストセラーを見る)
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By ロビン トップ1000レビュアー
形式:単行本|Amazonが確認した購入
 ドイツの哲学者で『意志と表象としての世界』の著者アルトゥール・ショーペンハウアーの伝記&哲学・思想解説書です。
 清水書院さんの「人と思想」シリーズは当たり外れがあるので中身を確認するまで少し不安でしたが(難解または記述が専門的すぎるものは外れだと思っています)、この本は平易な文章で構成的にも偏りがなく、当たりだったと思います。
 私はショーペンハウアーの作品は『幸福について』しか読んだことがなかったのですが、生涯と思想の全体を概観してくれているこの本を読んでみて本当に良かったと思いました。『幸福論』だけでは、ただのぺシミスティックな哲学を標榜する気難しいおじさんだと思ってしまうところでした。

 父親への尊敬と母親との不仲(この影響か女性に対して偏見を抱いているというか不当に評価が低いところがある)、旅行魔だった青年時代、良き師との出会い、ゲーテとの交流やバイロンとのニアミス、キルケゴールが晩年ショーさんの哲学に関心を抱いていたこと、大作曲家ヴァーグナーから非常に尊敬されていたこと、ヘーゲルの影で過ごした教授時代、意外と熱い恋愛経験、音楽好きで毎日フルートを吹いていたこと(!)、犬を飼っていたということ(しかもプードルなんて可愛い犬を・・。これは特に意外だった)・・。
 詳しく聞いてみれば、金銭的には裕福でも家庭的には苦労もしており、また知己を得た後に学問で意見の不一致を見てしまうゲーテに対する、変わらない感謝と尊敬の念など、好感の持てる人間らしい顔が浮かび上がってきます。彼が仏教を初めてヨーロッパに紹介し、<東西思想の融合>の嚆矢となった人物であるということは知っていましたが、仏教との出会いを経て生まれた<共苦>の思想などについては本書で初めてちゃんと学ぶことができ、理解を深め親近感を感じられる一面を沢山知ることができました。
 ただ女性に関しての考えにはもの申したいというか・・仏教の祖・釈尊最晩年の教えである『法華経』では、それまで「成仏できない」と言われてきた畜身・幼年・女性である<竜女>が法華経によって劇的に成仏する場面が描かれていますし、また日蓮は「男女はきらうべからず」「法華経の師子王を持つ女人は一切の地獄・餓鬼・畜生等の百獣に恐るる事なし」「此の経を持つ女人は一切の女人に・すぎたるのみならず一切の男子に・こえたりとみえて候」とまでおっしゃっており、本当の仏教思想は女性を尊重し重視するものであることを一言させていただきたいです。この辺りショーさんがもし『法華経』や日蓮の『御書』を読んでいたらどう感じたのかなあ、と思いました。 
 ともあれ、<主体>と<客体>を対立する概念として捉えない仏教思想を取り入れたショーペンハウアーの哲学は、ニーチェやトーマス・マンなど多くの人間に影響を与えたそうですが、引用や比喩の多い文体とその仏教に対する関心から見ると、先日読んだボルヘスももしや影響を受けているのかしらなどとも思います。
 
 また後半部の思想解説も、素人が読んでも分かりやすい文章で書かれていて非常にありがたかったです。<ペシミズム>の正しい意味は<厭世主義>ではなく、<最悪主義(この世を最悪の世界と観る主義)>であり、ショーペンハウアーは、スピノザらが唱えた<予定調和説>の楽観主義に疑問を投げかけ、そうした苦に満ちた現実世界を直視し、超克するために<共苦(ミットライト)>の思想に行き着いた、というくだりには心打たれました。ここに至って、ショーさんの哲学は一見悲観の雰囲気が漂っていて厭世的と誤解されやすいけれども、よくよく聞いてみると実は生を真っ直ぐに見つめたカッコいい哲学なのだ、という事実に私もようやく気が付きました。
 後半部は、ショーペンハウアーの哲学を理解するのに必要な先輩哲学者カント、また後輩哲学者ニーチェの哲学に関しても要点がとても分かりやすくまとめてあり、「カントの『理性批判』、ニーチェの<超人>ってそういうことだったんだー!」と眼からウロコの思いで読みました。<哲学者>というと頭でっかちの学者のように思われたりしますが、ソクラテスやプラトン、エマソン、デューイなども含め本物の哲学者は皆実際的であり、真剣に真摯に生の問題を解決しようと苦闘していた人たちなのだということが改めてよく分かり、感動します。漠然としたイメージと実際は大きく違うものです。
 ともあれ本書は初学者への配慮の行き届いており、この<人と思想>シリーズの中でも良書だと思います。私の様なビギナーの方に、ショーペンハウアー入門書としてお勧めの一冊です。
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