軍需企業ノバ社の研究所で、軍事関係者を集め、新たな戦闘ロボットのエキシビジョンが行われていた。5体の戦闘ロボットは、抜群の性能を見せつけ、エキシビジョンは成功に終わる。格納庫に戻された5体のロボットだったが、No.5(ナンバー5)に落雷する事故が発生。それがもとで、ナンバー5には突如、感情が芽生えてしまう。自由を求めた彼は、研究所から逃げ出すのだが…。
『
ウォー・ゲーム [MGMライオン・キャンペーン] [DVD]』(1983)や『
ブルーサンダー [Blu-ray]』(1983)など、テクノロジーに支配される現代の危うさを主題にした作品を送り出したジョン・バダム監督。彼が、主題をさらに一歩進め、心を持ったロボットが活躍するという、テクノロジー(ロボット)と人間の融和を描いたハートフルな冒険物語。スマッシュ・ヒットを記録し、2年後には続編『
ショート・サーキット2 がんばれ!ジョニー5ファイブ [DVD]』(1989)も作られた(ただし、出演者は総入れ替わり)。
『
オズの魔法使 [Blu-ray]』(1939)のブリキ男(ジャック・ヘイリー)は、自分のカラッポの胸を叩いて嘆き、こう歌った。「もし心があれば、愛や芸術に胸ときめかせ、涙を流すだろう」そして、オズの大魔王に念願だったその「心」を貰う。しかし、心があるということは、楽しいことを感じるだけではすまない。悲しいことも感じることになる。かつては、何も感じなかった彼が、ドロシーと別れる際には、「今は心があるから悲しいよ」と言う。本作の心を持ったロボット、ナンバー5もまた、心を持ったがために、さまざまな感情に振りまわされることになる。自分が殺人戦闘マシンであることに悩み、死の意味を知る。そして恋する歓びと素晴らしさも知る。つまり、これは、心を得た現代のブリキ男の物語なのである。
と同時に、これは公開当時から言われていたように(誰が観ても一目瞭然なのだが)、ロボット版『
E.T.コレクターズ・エディション [DVD]』(1982)でもある。創り手たちは、明らかに『E.T.』を意識している。パロディというよりも、敬意を表しつつ、自分たちのロボット版『E.T.』を真剣に作っているのだ。ナンバー5が逃げ込む先のステファニー(アリー・シーディが、溌剌とした魅力を振り撒いている)は、彼を初めて見た瞬間、完全に宇宙人と思いこみ、舞い上がって「地球にようこそ!」と言ってしまうし、ナンバー5は、E.T.のように、百科事典やTVを見て、知識を蓄える。ただし、E.T.が、TVでジョン・フォード監督の『静かなる男』(1952)を見て、人間の愛を知るのに対し、ナンバー5は、役に立たない雑学(すべて映画に関すること!)ばかりをつめこむ。ステファニーの元彼が金の無心に来ると、早速、TVで見た『暗黒街の顔役』(1932)のジョージ・ラフトよろしく、―ステファニーの用心棒のように―コインを宙に放る仕草をしてスゴんでみせたり、銃を撃ってくると、『
リバティ・バランスを射った男 [DVD]』(1962)のジョン・ウェインを真似て、「やるじゃないか、先生!」などと茶化したりするのだ。そればかりではない。『
サタデー・ナイト・フィーバー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]』(1978)のトラボルタばりに(いうまでもなく、バダム監督の名を一躍有名にした作品である)、ステファニーと流麗なダンスまでしてしまう。『E.T.』を基本プロットにみせる、こういったバダム監督の数々の楽屋オチ的ギャグは、しかし、決して悪ふざけという感じはせず、作品を楽しく彩っている。単純に『E.T.』の亜流、あるいは翻案とは侮れない、独自の軽やかで楽しい感覚に溢れているのである。事実、『E.T.』の余韻のある(しかし若干湿っぽい)切ない別れはここにはなく、爽快な―そして、続編を匂わせる―ドンデン返し的ラストが待っている。
ナンバー5のデザインが素晴らしい。『
ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]』(1982)や『
エイリアン2 [Blu-ray]』(1986)で、未来の乗り物のデザインをしたシド・ミードによるものだが(バダム監督のたっての願いで、『エイリアン2』の仕事の合間を縫ってデザインしたとのことだ)、軍事ロボットという面をキチンと踏まえつつ、キャタピラーの足(バッタのように跳ぶことも出来る!)で、丸い大きな目、ひょろ長い腕…と、これまた丸きりE.T.をそのままロボット化したような、機能性を重視しながらも、決して無機的ではないユーモラスで愛嬌のある造型。映画史に登場するロボットとしては、『メトロポリス』(1926)のマリア、『禁断の惑星』(1956)のロビー、『スター・ウォーズ』シリーズ(1977〜)のC3PO、R2-D2にも比肩するものだろう。
この楽しくやさしい「現代の」ブリキ男の話は、その後、本作のインスピレーションの源となった『E.T.』のスピルバーグ監督によって、憂愁に満ちた「未来の」ブリキ男の話『
A.I. [Blu-ray]』(2001)へと受け継がれることになる。E.T.からナンバー5、そして、デイビッドへ。何か不思議な因縁を感じさせる。
本Blu-rayは、米Image Entertainment盤同様、PSOのHDテレシネ・マスターを使用。徹底的なレストアとカラコレ(=色補正)がされていないのだろう、新作のような精細感はなく、どちらかというと、色合いも鮮やかではなく、ディテール表現も極上とは言い難い軟調の画質といった感じだが、80年代の作品としては許容できる範囲。5.1chDTS-HDマスター・オーディオの音声は、バランスが良く、問題ない。「ゴールデン洋画劇場」版の日本語吹替え収録も嬉しいところだ。
特典も、米Image盤のものを出来うる限り収録して嬉しいところだが、北米以外での権利許諾が取れなかったのか、あるいは許諾が取れたものの、使用料が払えず収録を断念したのかは不明だが、米盤のかなりの特典が削除されてしまっているのが残念だ(本作のファンの方は、米盤を取り寄せるのもいいと思う)。とりわけ、バダム監督、脚本のウィルソンとマードックのコメンタリーが収録されていないのは致命的。常に素晴らしいパッケージ・ソフトを出してくれるキングレコードにしては、(値段を考えても)画竜点晴を欠くと言わざるを得ない。その点で、星1つ減点。