内容紹介
ヤブウォンスキというと、すぐに1985年の第11回ショパン国際ピアノ・コンクールが思い出される。このときヤブウォンスキは第3位を獲得したが、その回は稀に見る激戦であり、第1位スタニスラフ・ブーニン、第2位マルク・ラフォレ、第4位小山実稚恵、第5位 ジャン=マルク・ルイサダ、そして第6位タチアナ・ピカイゼンという、いずれも現在世界の第一線で活躍している入賞者の顔ぶれからも、その高水準ぶりが如実に窺われるのである。 しかしながら、今のヤブウォンスキは23年前の彼ではない。あれからじっくりと研鑚を積み、また探求を深めたのであろう。40代を迎えたヤブウォンスキからは、刮目すべき独自の方向性と熟成が十二分に感じられるのだ。 ヤブウォンスキのショパンは、かつてショパン自身が演奏していたスタイルと同様、古典的な構築観に立脚している。それはヤブウォンスキ本人も認めるところであり、師であるアンジェイ・ヤシンスキを初め、ポーランドのピアノ教育の伝統を連綿と踏襲しているのだが、だからこそ正統的なアプローチに根差したヤブウォンスキのショパン演奏が生彩に溢れ、いつまでも色褪せることなく永遠の輝きを放つのである。 もとより美しい独特の音色は煌くような透明感を携えながら馥郁たる彩りを纏い、グラデーションのように精妙に変化していく。そしてヤブウォンスキの鋭敏な感性は、揺るぎ無い磐石のテクニックに支えられて、音楽それ自体の存在感を一層際立たせるのだ。このCDは、そういう閃きとアイディアが渾然一体と詰め込まれた垂涎のアルバムに仕上がった。ここではあくまでも自然な流れの中に、デモーニッシュなショパンやコケテッシュなショパン、或いはチャーミングなショパンなど、万華鏡のように変幻自在なショパンが顔を覗かせる。それに加えてアルバム全体からは、瑞々しい気品が湛えられた芳醇なロマンが一貫して立ち昇ってくるのである。 日々深化しつつあるヤブウォンスキこそ、ショパンの魂の継承者であることは間違いない。(真嶋雄大:ライナーノートより)
アーティストについて
1965年ポーランドのヴロツワフに生まれる。6歳の時ヤニナ・ブトル氏に師事し12歳まで指導を受ける。12歳でオーケストラと共演、その後ポーランドで開催された数々のコンクールで1位に入賞する。1983年から1986年にかけてポーランドのカトヴィッツェ音楽院にてアンジェイ・ヤシンスキ教授に師事し、1987年に同校を優秀な成績で卒業、1996年にはPh.D.を取得。 1985年、第11回ショパン国際ピアノコンクールにて3位に入賞、それと同時に数々の副賞も受賞。第2回国際ピアノコンクール(1988年)では第1位並びに最優秀ショパン賞を、第10回国際ピアノコンクール(1988年)でも第1位を獲得、GPA国際ピアノコンクール(1988年)にて第2位、第4回アルトル・ルビンシュタイン国際ピアノ・マスターコンクール(1989年)にて金賞、ニューヨークウォルター・ナウムブルグ財団国際ピアノコンクール(1992年)入賞、第1回イーザー・オーネス国際ピアノコンクール(1992年)で第2位入賞。 ヨーロッパを初め、各国でツアーに参加している。ベルリン・フィルのマスター・コンサートシリーズに出演する等、数多くの有名なコンサートホールにて演奏。1999~2006年にかけてはワルシャワの国立オペラ劇場と親密に協力し、ショパンの時代に発展したバレエのための音楽を演奏。2005年にはワルシャワにて18世紀オーケストラと共演、歴史的ピアノを用いてショパンの作品を演奏するというポーランドで初めての試みを実現した。一方テレビ・ラジオ等の録音も国際的に行い、ドイツ・日本・ポーランド等で多くのCDを録音している。エキエル教授のナショナルエディションとして有名な版によるショパンの作品(練習曲・プレリュード・即興曲・管弦楽とピアノのための作品)3枚のCDを録音。 1994年以来ピアノ教育者としても活躍。ポーランドのヴロツワフ音楽院、カトヴィッツェ音楽院にて指導にあたり、現在はワルシャワのショパン音楽院にて教授の職を務めている。その他、各地のマスタークラスの講師や国際ピアノコンクールの審査員としてその教育活動の場を広げている。