ショパン個人の音楽人生の浮沈だけでなく、同時代を生きた(恵まれていた)メンデルスゾーン、(文学青年)シューマン、(楽器のできない!)ベルリオーズのキャラクターと活躍も描き込まれていて、立体的に歴史がわかるいい本です。
バッハは死後長らく忘れ去れていたものをメンデルスゾーンが再発見していて、というのも「音楽は技術」見なされていて一代限りだったから(第2章)というくだりからは、音楽の捉え方が今日とは違うことに気づかされる。時代を超えて演奏される「名曲」はメンデルスゾーンの仕事によってもたらされた、などとというと、ちょっと謎解きっぽくて楽しくなりませんか?
そのほか、コンサートでピアノ曲だけが演奏される「リサイタル」はリストがはじめて(第3章)、ショパンの音楽はあまりに独創的だったので模倣者も後継者も現れず作品だけが伝えられた、など、ついマーカーを引いてしまいたくなる箇所が次々と出てきます。
意外なことに、本書はジョルジュ・サンドとの出会いで幕を閉じてしまうのですが、無名時代にこれだけ豊かな物語があったのだと思うと、「子犬のワルツ」もいつもと違って聞こえそうです。