1952年生まれのフェルツマンは1971年のロン・ティボー・コンクールでのグランプリ受賞以来、世界で活躍しているが、国内盤のリリースが少ない。
そんな事情もあって、日本での認知度はやや低いと思われるが、実力確かなピアニストで、聴きもらすには惜しい存在である。
そんな中、カメラータからリリースされた一連の国内盤はリーズナブルで入手しやすく、オススメである。
ここではショパンの夜想曲全曲(第1番〜第21番)に舟歌、子守歌が合わせて収録されている。
まず、なんといっても高音のきらめくような美しさに弾かれる。ショパンの夜想曲の場合、右手が単音で旋律を奏でるようなシーンが多く登場する
が、それらの多くが夢見るような美しさで弾かれている。
肩書きに有る「幻想的ピアニスト」とはそう言うことなのかな。。。
そして低音もクリアで明瞭であり、きわめて見とおしの効く、済んだサウンドとなっている。
演奏そのものについて言えば、テンポきわめて穏当で王道を行っていると思う。
また、アシュケナージやポリーニといった大家の演奏に比べると、感情の振幅が広く、低音の保持はより自由度が大きい。
旋律はより自由さを獲得し、伸びやかに歌い、挿入される装飾音も気品を崩さない範囲に収まる。自由さを獲得する一方で構築性はやわらぐが、この演奏の魅力はやはり「適度な自由さ」にあるだろう。
感情の起伏は大きいが、それでも、ピリスのように感情過多にならないところが筆者としてはとても好感を持てる。
特に、いまひとつ人気のない曲が、とてもいい曲に響くのが好印象で、中でもスケールが大きく感じられる第7番や、美しいモノローグのように描写された第14番、適度な軽やかさで巧みに描かれた第15番、装飾的な高音がすっと空中にたなびく第9番など、本当に素晴らしいと感じた。