アシュケナージの演奏は個人的には実に標準的だと思っている。
標準的というのは決して悪い意味ではない。とにかく安心して聞いていられるのだ。
アシュケナージは、ポリーニのようにテクニックを全面的に押し出すわけではなく、しかし高度なテクニックであっさり弾き、アルゲリッチのような豪快さはないが、それでも力強さは天下一品である。つまり、バランスが取れているのである。
このワルツの全集でもやはりそうしたアシュケナージの美点が大いに発揮され、とにかく安心して音楽を聴くことが出来る。しかし、だからといって特徴がないということはない。
ここで聴けるワルツは、数多くあるショパンのワルツのなかでも特筆してきらびやかな音色である。このきらびやかさは、当時、ワルツが新しい音楽として登場したという新鮮味を実に見事に演出していると思う。「華麗なる」とあるが、まさにそのとおりの「華麗さ」をこの演奏では聴ける。
ちなみに、特に有名かつ人気のある「子犬」に関しては、新録音のほうよりもこちらのほうの演奏のほうが個人的には気にいっている。小さな元気のいい子犬が走り回る様子がよく出ていると思う。
デッカ(ロンドン)の録音は独特な響きがあるが、この響きは意外と聞きやすさにもつながっていると思うので、最初のワルツ集としてはお勧め。