1985年のショパン・コンクールにおいて、審査員たちが(演奏者の名を知らない状態で)過去5年間に録音された主なショパン録音の中から、「もっとも優秀」と選んだのが本録音。もちろんショパン・コンクールの審査員という「コンクール評価者」が、プロフェッショナルな録音活動の作品まで評価することに異議は挟めるけれど、それでも一つの権威によって刻印を刻まれた録音ではある。
一聴して、「意外」に感じるのは、かなり個性的な演奏だという点である。コンクールの審査員の評定点として、やはりショパンの「理解」とともに「忠誠」のような概念があるような想像があるけれど、この録音ではむしろショパンの作品を興味津々に分解するカツァリスの喜悦のようなものが感じられ、それが面白く感じられるからだ。
より特徴が明確なのが、「スケルツォ」。スケルツォはショパンの楽曲の中でも、きわめて律儀な三角形の構造を有しており、そのため「繰り返しのフレーズ」が耳に残るわけだが、カツァリスは聴き手の耳にのこっている「前回のフレーズ」を、次の提示においてあえて違った角度で提案することにより、新鮮な味を加える。そのため、「分解」のイメージが聴いていて残る面があるが、面白いことは面白い。特徴的な、時として「そこまで・・・」と思うほどのアクセントや濃淡、ペダリングは、ホロヴィッツをも思わせる。
ただ、もちろん本盤が他のショパン録音とくらべて優れているかどうかという比較は、実際「優れている」という価値が多様すぎて(そこがクラシック音楽の素晴らしいところですね)、一概に言えるものではないので、できるだけ多くの録音を聴くのが(もちろんお財布との相談事項ですが・・)やはり理想でしょう・・・。