本書は2008年に刊行された『別冊映画秘宝 ショック!残酷!切株映画の世界』を書籍化したものです。
表紙をめくると巻頭カラーが8ページあり、冒頭は『レイダース・失われた聖櫃』のナチス幹部の顔が溶けるシーンでした。これだけでもたまりません。DVDを早戻しして何回も見た忘れられない場面です。続いてページをめくると『オーメン』の首チョンパ、『プライベート・ライアン』の頭部飛散等、まさしく私がDVDやBDで何度も何度も再生した場面が巻頭カラーページを飾っています。本書に大いに期待を持って読み始めました。
本書は16人の筆者が各自の『切株』映画への愛とレスペクトを綴っている31編から成るオムニバスです。冒頭を飾る高橋ヨシキの論説は『切株』が社会的タブーに抵触するものとしながらも、それは飽くまで娯楽であると力説します。ジョン・ウォーターズ監督の映画を審査した司法長官助手の「君の作品は悪趣味極まりない代物だが、悪趣味は犯罪ではない」という言葉を援用し、さらにヒートアップしていきます。美しいもの心地よいもの高尚なものをアートと捉える風潮を批判し、そのような固定観念を打破するのも芸術の役割・機能であるとしながらも決して大上段に構えることなく、畢竟、シェークスピアの作品群もトランスグレッション・アートではないかと正論を述べています。多くの作品を引用しながら、高橋は『切株』への愛を切々と訴えているように思えました。作り物として楽しむ余裕と、ブラックユーモアに溢れた『切株』を、それ故に愛する純真な著者の熱いラブコールはエールを送る者・愛ある者の美しさを感じさせます。
山崎は『切株』映画の世界映画史を解説しています。スプラッターの源流へ読者を案内してくれます。ポスターなどの図版が豊富で、目も楽しませてくれました。以降、有名な作品や監督に焦点を絞った解説が多く、納得したり、感心したり、驚嘆したり…。ネタバレになりますので、このへんで。