原題にある「ディザースター・キャピタリズム」のディザースターは通常「災害」と訳されることが多いが、本書に於いてはタイフーンや津波で生じた混乱に乗じて漁民の土地をリゾート地に変えたりすることだけではなく、人為的な「戦争」でも大がかりな強奪が行われていることも指す。
この「惨事」便乗型資本主義、の象徴的人物がブッシュ(息子)政権のチェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官。大手多国籍企業の重役と政府の重職を回転ドアのように行き来する高官たちの中でもトップレヴェルであり、イラク戦争でも大儲けした。911アタックそのものが陰謀との説もあるが、その後のイラク戦争はもう陰謀そのものだろう。
そこで行われているのは独裁者からの解放などではなく、国家解体・抹消である。米政府および各国の援助金が復興建設などを行う多国籍企業に下請けに出され(しかもかなり杜撰な)、企業は外国から安い労働者を連れてくるのでイラク国民は潤わない、という構図だ。こうした政府高官と企業、経済学者の結託による「惨事便乗型資本主義」が襲った国は間違いなく格差が拡大し、金持ちはゲートとガードマンに囲まれた「グリーン・ゾーン」に住み、貧乏人はその外側で貧困に喘ぐという、バイオレンス・ジャックを彷彿とさせる弱肉強食の世界に変わる。本国アメリカとて例外ではなく、ハリケーン・カトリーナの後に公立校が次々閉鎖されたり、一部の白人・金持ち区域が市から独立してしまう、といったことが行われている。まさに国家内分断が現実化している。
原書発刊が07年とのことでオバマ政権誕生にも一役かったのかもしれないが、その後南米ではこの種の米政権・多国籍企業進出にNOを突きつける動きがあるし、中国でも天安門事件以後キャピタリズムに走った後、各地で格差社会に対する抗議行動が再び芽吹いてきている。韓国はIMFの助言を受け容れた後、大企業は栄えたが物凄い格差社会となり自殺率が急増。最近も財閥オーナーが私財を貧困層の学資援助に寄付する、との報道があった。民衆のマグマは噴き出ようとしている。
幸い東北関東大地震のあとは大手企業などが乗り出す気配はないが、今後も本書にあるような事象は世界各地で起こり得るだろう。これは新しい帝国主義、植民地化なのだ。