不思議な映画です。
「ショコラ」という美味しそうなタイトルと、「小さな村に開かれたチョコ―レト屋さんのお話」という設定に以前から観たいと思っていましたが、昨日偶然BSで観る事が出来、素晴らしく見事に期待を裏切られました。どっしりと見応えのある、また色々な事を考えさせられる作品でした。
封建的な村の人々の排他性、キリスト教の教えを盾にヒロイン・ヴィアンヌ母娘を悪魔の手先のように排除しようとする村長の伯爵、伯爵に押さえつけられ、また互いに見張るように「正義」という名で人間性を失って暮らしている村の人々の中に、オルゴール箱のような魅力的なチョコ―レート屋さんを開いたヴィアンヌ。心に響かぬ説教をする若い祭司より、温かくチャーミングな微笑みを絶やさずに人の心を甘いチョコレートとともにときほぐしていくヴィアンヌ。彼女は教会には行かないけれども、そこに集う村人たちの誰よりも愛をもって分け隔てなく人々に接しています。クリスチャンの私はこの映画を観て「本当の愛ってなんだろう」「人間が生きていくってどういうことだろう」と深く考えさせられました。また海賊?のルーとの大人の恋も観ていて心温まりました。ルーの前では本当に可愛い恋する女性になるヴィアンヌがとても素敵だった・・・。
この映画の素敵なところは、登場人物全てが一人残らず人間味たっぷりなところです。あちこちの場所で同じような村八分を受け、この村で努力しようとしても挫折しかけ、涙ながらに去っていこうとするヴィアンヌも、最後にがちがちによろいで固めていた心が壊れ、ヴィアンヌの店に入り込み、チョコレートを食べ尽くして眠りこけてしまう伯爵・・・誰一人憎めないのです。「ああ、自分にもそういうところ、あるよなあ」と共感させられてしまう。また、その姿を見た、今まで伯爵の言いなりだった気弱な若い祭司の説教のシーンがラストにあるのですが、そのシーンは圧巻でした。テロップにあるように決して雄弁でもなんでもない彼の説教が心に染みるのです。理由は彼が自分の言葉で語り始めたからでしょう。そう、村の人々は本当の自分を生き始めたのです。ラストシーンの復活祭のカーニバルで村人みんながヴィアンヌと微笑みを交わしながらチョコレートを楽しむ姿はほろ苦く甘くタイトル「ショコラ」にぴったりでした。
ヨーロッパの大人の映画って、こういうのかなあと思わされました。前のレビュアーの方々も書いておられましたが、この映画は本当に小さな映画館か、ご家庭でご覧になるとしみじみ良いと思います。まだ生きていない人生の深みを教えてくれる映画です。