宣伝でちょっと観てみたいな、と以前から思ってはいたのだが、なんとなく見逃していた作品で、やっと観たらこれが結構面白かった。
「大人のメルヘン」というような宣伝をされていたし、実際赤い衣装のジュリエット・ビノシュとその娘ヴィクトワール・ティヴィソルが登場する冒頭シーンからそういう雰囲気は濃厚なのだが、物語が進むに連れ、スウェーデン出身の名匠ラッセ・ハルストレム監督の手堅い演出とジョニー・デップ、アルフレッド・モリナ、ジュディ・デンチといった名優たちの素晴らしい演技が登場人物たちの感情生活に奥行きを生み、ちょっと言葉は恥ずかしいけれど心にジンとくる感動があって、これはメルヘンというようなものではなく、本当の大人のドラマだなあ、と思わせられる。
普通だったらヒロインのヴィアンヌはもっと強い人物にしてしまうだろうけれど、彼女の弱さがしっかり描かれているあたりも素晴らしいし、夫の暴力と周囲の無理解によってボロボロになっていたレナ・オリン演じるジョセフィーナが、ショコラ作りを契機にして立ち直り、どんどん美しい女性に変身していくところなども良かった。湖上で風の声を聴き、画面に向かって決然とした顔を向けるジュリエット・ビノシュの凛々しさも印象に残る。正直最初に彼女が登場したシーンではその老けぶり〜皺の深さ〜に吃驚したのだが、美しい人はやはり美しいのだな、としみじみ思う。