今日においてもシューマンに対しては「霊感で作曲した」「病的である」「特殊すぎる」などの言葉が飛び交います。
しかし、ワーグナーやブラームスが活躍していたころのシューマンの存在の重みを適切に表しておらず、「霊感・病的・特殊」といった言葉は表面的です。
本書はピアノ作品(「フモレスケ」「アベッグ変奏曲」「ピアノ協奏曲」)、
四曲の交響曲、「ヴァイオリン協奏曲」「ファウスト」の成立背景と
その楽曲分析を行っていきます。
そこから表れるシューマンは、なるほど1830年代は優れたピアノ作品を生み出しましたが、
それ以前から常に交響曲を作曲しようという意志があったこと、
シューベルトの「グレート」の発見でベートーヴェン以後も交響曲を書けるという確信を持ったこと、
そして第一交響曲に関しては4日間でスケッチを完成させた後も推敲を重ねたことなどであり、
シューマン理解がなんと浅薄であるのかと我々に猛省を促します。
2010年という「生誕200年」という時代においてもロマンスや病気など一面的なことしか大きく取り上げられませんが、
本書はシューマンと彼の音楽の真の魅力を彫り出すとともに、
特に交響曲においてベートーヴェンとブラームスの間に
シューベルト、メンデルスゾーンそしてシューマンを入れ、
交響曲の歴史をより豊かなものにしてくれます。
今日においても音楽史で前提とすべきことを伝えてくれる一冊です。