私はいわゆる「ハルキスト」を自認しておりまして、村上春樹さんの著作は、小説からエッセーに到るまでほとんど読んでいます。そんな村上さんの作品の中に、「意味がなければスイングはない」という評論集がありますが、これは、村上さんの音楽に対する強い想いや拘りが込められた、すばらしい音楽評論集だと思います。作家になる前はジャズ喫茶を経営していた人ですから、ジャズに対する造詣の深さは半端ではないわけですが、ここにはジャズに限らず、クラシックからJ-POPまで、いろいろなジャンルの音楽が取り上げられています。そのうちの一つが、このCDに収められている「シューベルトのピアノソナタ第17番」です。村上さんは、この曲が収められているCDやアナログレコードを、演奏家別に15種類も自宅に持っているというのですから、驚きます。そして、それぞれの作品の評価が書かれていて、本CDはその中で最もお薦めのものになります。私はシューベルトのピアノソナタを一つとして聞いたこともなく、演奏しているアンスネスというピアニストも知らなかったのですが、実際に購入して聞いてみて、確かにすばらしいと思いました。このCDのお陰で、シューベルトのピアノソナタも好きになりましたし、アンスネスというピアニストも大変気に入りました。シューベルトのピアノソナタはどれも大変長いのですが、第17番のみならず、全て力作で聞き応えがあります。