●最高なのがベーム&ベルリン・フィルのシューベルト「未完成」(1964年頃の録音)と「ザ・グレイト」(62年頃の録音)だ。現在は古楽器の溌剌たる演奏が流行ですが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったカラヤン指揮の時とは全く異なる「スケールもでかいし迫力十分なのに室内楽的精緻さも兼備」というアンサンブルを駆使して(とても同じベルリン・フィルとは思えない!)「これこそシューベルト」というオーセンチックな王道を行く。特に旧番号9番の「ザ・グレート」は凄い。壮麗なファンバーれには音としての「えぐり」があり魂にまで届きます。「ベートーヴェンの第9へのオマージュ」ともいうべき第三主題が第一主題に回帰していくさまなど、ホールが地響きを立てるようなトッティとあいまって「これこそ音楽だ。これこそシューベルトの魂だ」と音楽家たち自身が夢中になって弾いている様が彷彿とします。胸が一杯になります。必聴盤です。
●ギレリス&アマデウスの「鱒」も冷徹なほど立派で端正な名演奏。それでいて豊かなのです。何度聞いても飽きません。
●ケンプの「楽興の時」はあっけらかんとした古典的即興性が勝った演奏ですが、軽妙洒脱な味わいは魅力的。個性的です。シューベルトの音楽の複雑な味わいが楽しめます。
●曲目も傑作ぞろいで、初心者こそ是非聞いてもらいたいなあ。