シューベルトの交響曲を、それも「未完成」と「グレート」を演奏するときには指揮者にもオーケストラにも微妙な「コツ」がもとめられるようだ。わたしは楽典にうといので雰囲気レビューになってしまい読む方に申し訳ないのだが、「未完成」にはシューベルト特有のやわらかな歌謡性が、そして「グレート」には雄勁で巨きな響きが要求されると思う。そうした相反する要求にこたえるだけの演奏は、そうそう出るものではない。
それがこの演奏だ、と思う。「グレート」が1963年、「未完成」が1966年の録音であり、ベームの遺した全集からの分売である。録音も非常にすぐれている。
個人的にヴァントという指揮者も好きで、彼がベルリン・フィルと録音した同じ組み合わせも高く評価するが、上記したように「剛柔あわせもつ」という要求にこたえている部分でこちらのディスクは「誰にでも薦められる決定盤」となっている。
この組み合わせのディスクはシューベルト他のピアノ曲、室内楽曲とカップリングされて2枚組がこれも廉価で出ているので、そちらの曲にも興味がおありの方にはおすすめする(ベームの振った交響曲については同一です)。
それにしても「グレート」第1楽章のいちばん最後のコーダの、オーケストラがまるでパイプオルガンが聖堂で響くかのように鳴る部分の美しさはどうであろう。これができた指揮者はベームしか、いない。