この曲はギレリスの名盤を持っていた。
その純粋音楽として結晶した名演奏に満足していたので、他の演奏家によるアルバムを聴く意欲がなかった。
でもブレンデルの「ます」は、ギレリス盤とはまったく違った魅力を持っていた。
ピアノ五重奏としての拮抗やまとまりが、すばらしい。
楽譜を見ながら、各パートの動きを確認しつつ聴きたくなるような演奏。
ブレンデルだけが録音時に60歳代で、後のメンバーは、30代か40代と若く、
特にヴァイオリンは本当に伸び伸びと演奏していて曲の個性に合っている。
録音も音が決して団子になることがなく、自分が彼らの真ん中に立ち、演奏を聴いている気分になる。
見事なブレンデル宇宙であり、シューベルト世界。
アンサンブルの良さは、次のモーツァルトでもそのまま持続し、メリハリの効いた心地よい演奏を聴かせてくれる。
「ます」とのバランスで、短調作品が選ばれているが、この曲はそれほど重々しくない曲想なので、
2人の作曲家の作品が並ぶバランスとして、とてもいい。
ジャケットもうまくこのアルバムの演奏の性格を表現している。