ルノー・カピュソンがアイザック・スターンのグァルネリを手にしてから最初の録音だが、同じ楽器でこうも違うのかと思うほど、二人の音作りの方向性は異なっている。スターンがマッチョな力強さを常に前面に押し出していたのとは対照的に、カピュソンは特に中声部で豊穣な音色を聴かせる。ブリュッセルでこの三人によるドヴォルザークのトリオを聴いた時に、緩徐楽章のヴァイオリンソロで突如として奏でられた一つのフレーズによって、大ホールの観客に一瞬のうちに緊張感が広まるのを目の当たりにしたが、カピュソンの音色はそうした瞬間を作り出す力を秘めている。この顔ぶれのシューベルトとしては、ジェラール・コセらとの「鱒」以来だが、あのアルバムで見せた、他をよせつけない細部の抑揚とリリックでありながらリズミカルな歌い回しは、このアルバムでも健在であり、有名なトリオ1番でも、多くの演奏を聴いてきた者がはっとさせられるような、驚きに満ちたフレーズが随所にある。カピュソン兄弟はアンジェリッシュやアルゲリッチともトリオを組むが、やや野暮ったい「溜め」のあるフレージングをするアンジェリッシュや、屡々ぞんざいさを感じさせるアルゲリッチと比べて、速いパッセージでのピアニッシモなど、繊細でミニマルな表現を得意とするブラレイは最高のパートナーであろう。