筆者はモサドの工作員として余りにも有名な人物であり、『スパイのためのハンドブック』という本も出している。本書と重複する箇所もあるが、本書は、モサドに入り、エジプトに侵入し、結婚し、エジプトで情報活動を行い、そして逮捕されて投獄される、という筆者のスパイとしての半生を描いたものである。エジプトでの筆者の情報活動は実にエキサイティングであり、事実は小説よりも奇とはまさにこのことだと思った。そして何よりも興味深いのが、華やかなスパイの生活のみを書くのではなく、全体の紙幅の半分弱を逮捕後の生活に割いている点である。裁判で判決が出るまでの過程は実にスリリングだったし、エジプトの牢獄の中での生活は全く未知の世界であり、非常に面白かった。実際のスパイの世界は極めて地味だと言われており、筆者自身認めているとおり、筆者のようなゴージャスな生活を送るスパイは稀だと思われるが、スパイの活動の一端を示してくれる一冊である。