映像の美しさは、ミュージックビデオ出身の監督ならではという印象。
特にブルーレイで観ると、そのシャープな映像が実に映えます。くっきりと研磨されて、スタイリッシュでありながら余計なものが削ぎ落とされ、ダイヤモンドカットを思わせるような映像。まさに得も言われぬ美しさ。
なかでも見どころはやはり春の祭典の初演舞台。あの舞台美術と衣装の再現を観るだけでも、このディスクを入手する価値ありです。そしてアナ・ムグラリスの美しいたたずまい、当時のパリの社交界や博物館の空気感。ココ・シャネルの別宅のしつらえ。ストラヴィンスキーの妻の衣装も、その質感や色合いがシャネルの創作意欲を刺激したというのがよくわかる登場をします。
映像がきわだっているぶん、男と女の関係のひずみも変な具合に強調されてしまい、とってつけたような濡れ場(表現としては見事なのだけれど)が繰り返されるのだけ、映画の言語としては少し不可解なものになってしまって残念。あのシーンを3回ではなく1回、いやせめて2回くらいに抑えて、全体的にもっと真実みのあるメリハリにしてくれてもよかったような気がします。
春の祭典などのサウンドトラックは『
ベルリン・フィルと子どもたち』での音源(サイモン・ラトル指揮)を流用しているそうです。よくも悪くもベルリン・フィル……という名演だと思いますが、こんなことを望むのは贅沢だとは理解しつつも、あそこまできちんと舞台を再現したのなら、音も同じ機会に(できればフランスのオケで)録ってほしかった。