ファン待望の新装版、早川書房はよくぞこの名作を復刊してくれた。この傑作の初版は1977年、新潮文庫から刊行されている。あれから30年以上の歳月が流れ、この本に驚愕した若者は今や中高年世代となった。本書の面白さは各レビューにある通りだが、「良い本」「力のある本」は読者それぞれに当時の時代背景までも鮮やかに蘇らせてくれる。
ベトナム戦争や米国社会・同国防体制への強烈な風刺、航空機や船舶に対する博識と、それをわかりやすく散りばめた筆力、時間軸と地理的な相関関係の正確さ、プロットの巧みさや全編を貫く緊張感、訳者・中野圭二氏の見事な翻訳と相まって、どこをとってもページをめくるのが惜しいほどである。
この名作を今日の若い世代はどう読むのであろう。今、読み返してみてもまったく違和感がなく、長い年月を超えて逆に新鮮ささえ感じるのは評者ばかりではあるまい。「冒険推理小説の面白さ」という点では群を抜く傑作である。作者ルシアン・ネイハム氏はこの一作のみを残して他界しているのがなんとも悼みきれない。今回の復刊によって「シャドー81」は永く読み継がれ、読む者の心に残り続けることであろう。