東京第一銀行長原支店を舞台とする連作短編集。第1話の副支店長に始まって、第10話のパート社員に至るまで、各話ごとに主人公を変えながら、一つのミステリーとして成立させる手腕はなかなかのもの。淡々と読んでいる内に、いつの間にか引き寄せられ、それぞれの主人公に共感したり、反発したり、喜怒哀楽を共にしながら、事件の意外な真相へと導かれる。
一昨年に発売された単行本の文庫化だが、そのときの書評も好意的で、高く評価するものが殆どだったが、読んでみて納得しました。一人ひとりの人物像が生き生きと的確に描かれていて、過不足の無い描写は素晴らしい。ミステリーとしてだけではなく、企業小説として読んでも質の高い作品。
休日にゆっくり時間の取れるときに、一気に読むことをお勧めする。