この映画は現在までDVD化されておらず、その発売を待たずに、ある世代以上の人々は
昔かろうじて録画していたVHSテープを大事にしても、それもいずれ見られなくなり、
やがては共に滅びていくのだろうか・・・?
ある世代以上の人々にとって、これが「元祖ロリコン物」などと思うはずがないではないか、
見せかけの行為や言葉がどうであれ、純粋で素直な心の在りかを信じる者には、この映画は
自分という存在を見つめ直し、ほんのひとときだけ心から安らげる癒しの世界となるのだから。
戦争で人を殺し、記憶喪失になった男と、親から見捨てられた少女。こころに深い傷を持った
ふたりが、日曜日ごとに公園で会う日々・・・まるで恋人同士、時には兄と妹、弟と姉、
あるいは親子のように触れ合う。
水面や樹木をとらえたモノクロームの静かな映像の、別の世界の音がきこえてくるような
神秘的な美しさと幽玄さ。時おり自然の物音や、弦楽器の重く響く音が入るだけで、余計な
装飾音が無いため、作品の世界の濃密さが増し、氷のような肌触りの映像が眼前に静かに
広がる感じである。
ラストの悲劇に、昔のTV放映吹き替え版では、感傷的で有名なカノンが流れていたが、
のちに、劇場でオリジナル版を見ると、その場面には音は無かったように思う。
オリジナル版は、あくまで心の闇をかかえた魂たちが、世間の誤解と誹謗中傷に惨殺される、
といった趣であり、お涙頂戴の安っぽい感傷などなく、むしろ、冷徹なまなざしを感じた。
密かにこの映画を愛する人々たちのひとりとして、この映画のDVD化を待望しています。