「二十世紀に書かれたものは殆ど読んだことがない」と語る覆面作家TrevanianによるTrevanianファンの為の大傑作。多種多様な形容詞を駆使し、登場人物が日常会話に用いる<日常語>が少しも日常語ではないという彼独自の世界が洋の東西を問わない大いなる(しかも、繊細な)展開を見せる本書は、英語圏では日本の場面描写の素晴らしさで評判になったのですが、この人が書くものの常として本書も決して万人向けの文学ではありません。例えば、パリの空港の描写を「モントリオールのよう」だという箇所があるのですが、彼の別の作品を読んでいない人にはなぜ「モントリオールのよう」なのかさっぱり分からないように(恐らく、意図的に)書いてあるのです。何はともあれ、本書は日本を好意的に(しかも誤解せずに!)描いた数少ない英語文学なので、その意味では一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います。