本書は、シティマラソンを題材にして描かれた三つの作品を収録した、各話70ページほどの短編集です。
それぞれの作品は独立していますが、某スポーツ用品メーカーのキャンペーンとして描かれた為か、話の骨格は一貫しています。それは、リタイアしたアスリートが、「走ること」との関わりを通して過去と現在の自分を見つめ直し、自己を再発見・再確認していくという内容です。つまり、自己実現の一環として「走ること」は重要であるというメッセージが読み取れます。
テーマが分かりやすく、ニューヨーク、東京、パリの三都の風景もよく描写されていて、非の打ちどころがないように思えますが、実際には、展開や人物描写が妙に機械的で唐突な印象があり、感情移入の一歩手前で終わってしまう感じがありました。作品のテーマを作者自身ではなく、スポンサーが決めるというのが「仏作って魂入れず」の遠因かなと思います。