ヒマラヤでヨガの究極の体験であるサマディを体験したという筆者。
その筆者が修行の旅をしながらサマディに至る道のりと、サマディによって得た理解をもとに日常生活における悩みを作りだす心の性質を解説し、それを乗り越えるためのプログラムを紹介するのが主な内容になっています。
本書が最もユニークな点は、日本人女性である筆者がインドの聖者に導かれてサマディに至るまでが、本人の言葉でかなり詳しく描かれていることです。
「あるヨギの自叙伝」や「ヒマラヤ聖者の探求生活」といった、伝統的ヨギを紹介する古典的名著もありますが、それらは一昔以上前にインド人や西洋人が書いたキリスト教徒の多い欧米の読者向きの本で、日本人には理解しにくいことも多いものです。ところが本書は現代の日本人が日本人のために書いたもので、著者が新鮮な体験に感激する様子などが、よく伝わってきています。
また、私たちを悩ます怒りや執着や思い込みがなぜ起こるのか、それらが解消しないのはなぜか等といった心の問題に対して、ヨガの世界観をもとにその仕組みを平易な言葉で説明してくれています。
難点はと言えば、まず英語やサンスクリットやヒンズーの専門用語が多く、その内容が明確でないことです。特に核心であるサマディ体験や心の執着などから開放されるプロセスは、専門用語になじみのない人は難しく感じるでしょう。
もちろんその内容は秘教であり、言葉では言い表せないことですから、仕方のない面はあります。しかし、ヒマラヤの旅や日常の心の説明が具体的で分かりやすいだけに、そのギャップに肩透かしを食らった感もします。
また、悩みから解放されるためには、「インド人以外で唯一ヨガの最高の境地にある著者のプログラムが、最も確実で簡単な道だ」という主張が本書全体を貫いている点も、評価が分かれるところでしょう。
このしつこいくらいの繰り返しに著者のエゴを感じる人にとっては、先述した核心の曖昧さとあいまって、本書すべてが胡散臭く感じられるかもしれません。
一方、素直に「そうか、この人はすごい。そういうプログラムもあるんだな」と、シンプルに受け止める人には、一つの道を指し示す本であって、本書の一語一語から、多くのことを得られると思います。