「医療先進国」であるはずの米国には無保険者が5000万人いる。
書物でそんな記述を、何度目にしただろうか・・・
「そうなのか」程度の感想しか持ち合わせなかった自分の想像力の乏しさに、いきなり一撃を喰らわされた。
映画の序章で「無保険者」の映像が流れる。
ケガをした自分の膝を自分で縫合する失業者。電気ノコギリで誤って指を2本切断し、高額治療費の余り、中指をあきらめた男性…
これこそが正に、「無保険」状態なのだ。
しかし、これらはまだ本作の主題ではない。
保険に加入していても保険金給付が否認されるという市場原理主義。
保険会社に給付拒否をされ、妥当な治療が受けられず、家族を失った人が言う。
「病人のための保険会社が、いざというときに役立たなかったら、何のための保険なんですか!」
米国の医療保険システムと対比して登場するのがカナダ、英国、フランス、キューバの医療システムである。
無論これらの国々にも問題点はある。
しかし、負け組になってしまったら、医療そのものが受けられなくなる米国との差は歴然としている。
エピローグでムーア氏の語る言葉は印象的である。
「結局、人は皆、同じ船の客なのだ。どんな違いがあるにせよ、一緒に泳ぐか、沈むしかない。意見の違いを乗り越えて助け合っていくしかないのだ。」
その言葉に胸が熱くなった。
日本の医療制度は、どっちを向いているのだろう。
本作は米国医療の問題提起を目的にする余り、偏見や脚色もあるかも知れない。
それを差し引いても見る価値は十二分にある。
医療者にとっては必見と言って過言ではなかろう。
【追加】
特典映像を収載したDISC2は、本編以上に必見です!
アレイダ・ガベラ(チェ・ゲバラの娘、キューバの医師)やトニー・ベン(英国労働党の元国会議員)へのインタビューが敢行されており、
ムーア監督との深い含蓄のあるやり取りは、医療政策を考えていく上で、極めて重要なものです。