「シズコさん」は7人子供を生んだのだが,そのうち3人の男の子は子供のうちに死んでしまう。生き残った最年長の子供(長女)が「私」。
でも,私は,母親には愛されていなかったと考えている。父親(私が19歳のときに死亡)は,私を愛してくれてはいたが,家庭内に緊張感しかもたらさないような人間だった。そんな母は,自分の家から嫁(私の弟の妻)に追い出され,私からも老人ホームに「捨て」られる。
「私」は,過去の種々のエピソードを思い出しながら,母親との関係を見直していく。その際,「親は子供を愛しているはず。子も親を愛しているはず」という社会通念(建前)ではなく,「本当はどうだったのだろう」ということが,できるだけ克明に描写されていて,ある種,つらい本である。なぜなら,これを読んでいる私自身,両親に対してアンビバレントな感情を捨てきれずにいるから。
両親との関係が良好な人には,筆者の苦悩は理解できないと思う。そうでなかった人は,是非一読して,自分と両親との関係を見直す材料にしてもらいたい。
つらいけど,読んでよかったと思える本である。