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「あなたが小さかったころ、夜になると時どき、あなたがわあわあ泣いているのが聞こえたわ。たぶん、私には聞こえた声が、あなたのママには聞こえなかったのね。音が上に伝わってきたのよ」
「僕の泣き声で起きちゃったの?」
「それは心配いらないわ。私、もともとすごく眠りが浅いの。雪が降っても目がさめちゃうから」(p.16)
少年の住む階には、元ポーランドの将校という叔父が尾羽散らしてまいこんでくる。凍傷となった足を暖めるために、足湯にポトンと発砲する薬剤を入れて休む叔父。上の階から聞こえてくるのはショパン。その曲が何かを少年は、その叔父から教えてもらう。
やがて妊娠した娘は、ひとりで家を出て子供を生む。叔父も放浪の旅に出そうだ。そして、最後になって、誰が泣いていたがわかる。そして沈黙に耳を澄ます。
こんな淡々とした話が続く短編集だが、柴田元幸さんが後書きで「いままで訳した本のなかでいちばん好きな本を選ぶとしたら、この『シカゴ育ち』だと思う」と書くのはわかるような気がする。
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