マクベスとマクベス夫人の対比が面白い。最初は夫人に背中を押されて鼓舞、さらに罵倒されることでしか悪事に向かえなかったマクベスが、終盤には夫人をも圧倒する存在になり、逆に夫人はすっかり弱気で妄想に取り憑かれてしまうと言うキャラクターの入れ替わりが非常に作為的ではあるが面白い。
魔女の予言で「女の股から生まれたものはマクベスを倒せない」「バーナムの森が動かないかぎり安泰だ」といわれたマクベスが、どのように滅びていくかというのも非常に興味津々だった。これは読んでいて、なるほどと感心してしまう仕掛けだ。
物語を語る単調なドラマではなく、いわゆる「ボケ」「突っ込み」などが溢れる喜劇的なやりとりの中に、真情を吐露する独白が混じったり、セリフに文化的な教養や時事性、痛烈な皮肉があるのには驚いた。さらにセリフに溢れる罵詈雑言、猥雑さに驚き、「ライブ総合芸能」としての演劇のエネルギーというかエンターテイメント性に感心した。実際には衣装、舞台装置や照明、そして客の反応を見るような間が演出されたりするのだろうが、あまり馴染みがなかった「演劇」にがぜん興味が湧いてくる。
原典が古いうえ何通りもあること、さらに解釈が色々あるのが古典の常だが、国内外の前例を踏まえた丁寧な脚注や解説がそれらを補ってくれている。こちらは文学という学問ジャンルへの取り組み方の認識が改まるところだ。