シェイクスピアの有名戯曲の紹介本。阿刀田高が得意とする類の入門書である。私は1998〜2000年頃、シェイクスピアの作品に集中的に取り組んだことがあるが、粗方忘れていたから、記憶の整理には役立った。なのに何となく不快感がある。
本書の記述は大変わかりやすくて、どこをとっても難解な文章には出会わない。本来、それは素晴らしいことである。しかし私の不快感は、そのことと無縁ではなさそうだ。つまり、品格の問題である。
紋切り型のくだけた表現が随所にある。そのため文体がおっさん臭い。そして、私は何となく、馬鹿にされている、と感じた。あるいはそれは言い過ぎにしても、作者が圧倒的な知識差を自覚することによって、読者を手玉に取ろうとしている、という文章に思えた。もしも私がシェイクスピアの作品をまったく知らなかったら、こんな印象は持たなかっただろう。せっかく役立つ本なのに申し訳ない気がするけれど、作者が学者ではなく文章のプロであるだけに、文体において改良の余地があると思う。