すこぶる画期的な内容で、かなり示唆に富んだ本です。というか、従来の常識をひっくりかえすほどの挑発的な指摘もあり、目からウロコが落ちるかも。しかし、あくまでも初心者向けの通常のシェイクスピア入門書とは言いにくいので、やはり注意したほうがいいだろう。
喜志先生は、劇作家が観客に情報を提供するための手法(たくらみ)、という一点にのみ注目して、シェイクスピアの豊饒な戯曲群を縦横無尽に読み解き、そこに現代においてもラディカルで普遍的な作劇術を見いだそうと試みています。
ですから、シェイクスピアの代表作のほとんどにざっと目をとおして、なおかつ、入門的な解説書を読むなどして、個々の作品についての一般的な理解と評価基準を、自分のなかにすでに持っている読者は、きっと、本書から新鮮な刺激を受けるのではないかしら。
もっとも、私はその方面の研究者ではないので、論旨のどこからどこまでが著者の独創なのか、まったくわかりません。けれど、たとえば、シェイクスピア作品について、なにかレポートを書くためのヒントを捜している文学部の学生のかたがいたとしたら、短時間で読める薄い本でもあることだし、参考書として一読の価値はあるような気がします。