仕事や家庭を言い訳に、本当の「自由」や「人生」を求めること、あるいはそんなことを考える事すらやめてしまった貴方や僕には、読んでみても良い本かもしれない。小説としては冗長にも思えるし、人気作家として金や名声を手に入れた作者のうわごとに聞こえなくもない。一方で、作品としてまるで取り繕っていないというか、そのぶっちゃけぶりに、真摯さと迫力を感じる。この本が伝えようとしていることは、おそらく、この作家だけじゃなくもっと普遍的な問題なのだということがわかる。
「われわれの人生には、われわれが向上するのをやめてしまう原因となった出来事がかならずある」というフレーズが出てくるが、人って、今の生活やパートナーへの依存、ある種の契約関係にいつの間にか気づかなくなり、あるいは気づいていてもそれが当たり前と思って生きているものである。
この本は、「こいつのせいで俺は束縛されている」と思っていた女に、「その気になればできる、できるって言うけど、全然やらないじゃないの」と焚き付けられ、しまいには、その女自らが「自由」や「人生」や「幸福」や「愛」の意味を求めて俺の前から去っていってしまう、というお話だ。依存関係が一旦リセットされた時、はじめて本当の「自由」や「愛」、相手の必要性が見えてくる、のか?
本筋の部分ではないけれど、この本でもっとも新鮮に感じられたのは次の一文。「本当の友というのは、僕らの身にいいことが起こったときにそばにいてくれる人なんだ。(中略)偽者の友達というのは、困難なときにだけあらわれる人だ、悲しげな顔をして『力になる』というような顔をしていながら、実際には、僕らの苦しみを使って自分の惨めな人生を慰めているだけなんだ」。この逆説的とも言える考えには、なぜか「そうか、そうだよな」と、深く共感してしまった。