これをジェネシス最高だとか、プログレ最高と言う気はないが、かなり優れた作品なのはたしか。
だがプログレのなかでも、キンクリやピンフロやイエスと違い、かなり言葉を重視するバンドだ。
これらのバンドは言葉以上に楽曲がキーだったのとは対照的に。
だからジェネシスをプログレと呼ぶのも躊躇われる。
たとえば「トミー」のフー、ピンフロ解散後のウォーターズに近い。
さらに本作はストーリー性が頂点に達した一品である。
だが詩・映像を含めて考え直すと、「ペット・サウンズ」が、ブライアンの「エゴ・ミュージック」、「トミー」「四重人格」が、タウンゼントのそれだったのと同じく、これもゲイブリエルの「エゴ」の爆発だ。
かれはイギリスの文学的臭さを、最大限に利用したと言えるが、「ザ・ラムズ」は舞台がNYになっている。
これが前作までとの大きな違いで、肌触りとしては Gabriel 2、フリップの「エクスポージャー」に似ている。
Disc 1 2曲目のNYを車で走っていたら、フロントグラスにハエが衝突する、というイメージがとても鮮やか。
ちゃんと聴くと1曲目冒頭にも、ハエの羽音が録音されている(Gabriel 2 の 3 Mother Of Violence はハチの羽音?)。ライヴではやはりハエが好きなダリの絵も背景に映していたようだ。
滝の瀑布が忽然と出現するイメージなど、NYの無機質な町並みを自然と腐臭が覆っていく。
こうしたひんやりした感触を味わうのも悪くはないのではないだろうか。