名作「蠅男の恐怖」(58)をリメイクした本作(86)は完全にクローネンバーグ作風の本領発揮であり、過去に無いSF・ホラー映画傑作の一本である。
今更物語内容を語るつもりはないが、製作当時の特殊メイク技術に於いて主人公セスが変異体となっていく過程の映像効果が素晴しく、クライマックスの蠅男(ブランドル・フライ)の画期的な変態場面が衝撃的な話題を呼んだ事が記憶にある。
(当時劇場で観た時の衝撃度は高く気色悪さも嫌悪感も効果大であった。)
前作「デッドゾーン」(83)がスマートな映像の傑作だったが本作は題材が題材なだけに期待を上回るモンスター物の見せ場を見せつけたクローネンバーグの監督技量は流石、ファン、マニアの心が判っているようだ。
デビュー作から見られる内臓感覚溢れるグロテスクな映像や悲劇的結末の余韻の深さ、医師と病院又は博士と研究所が何らかの形で関わってくる彼の作品の特徴と癖が面白く本作にも反映されている。
しかし、本格的ホラー映画として本作は最後の一本であり、以後クローネンバーグの異常性は精神的世界を突き進んでいく、万人受けはしない難解的作風路線へと変わっていくのだった。 マニア、オタク向けの珍怪作映画だったりする。 (笑)