本書は長年資産運用の現場で多様な業務に携わってきた
著者が、業界のあり方、自身の体験、市場との対峙法など
多岐に亘る内容を記した書物である。
評者は個人投資家の端くれとしてこの本を読ませてもらったが、
ファイナンス理論に関する部分は表面的な記述しかなく
(紙数が少ないので当然だが)、経験談についてはちょっと
赤裸々さが足りず、率直に言って物足りない印象である。
読者としてファンドマネジャーを志望する若者を考えるので
あればどうやって運用業界に潜り込み志望の部署に入り
込むかといったノウハウが記されていた方が親切だろうし、
一般の読者にファンドマネジャーの生態を暴露するのが
目的ならもう少し掘り下げた著述が必要なのではなかろうか。
凡庸なファンドマネジャーでも年収三千万円程度の報酬を得ている
旨の記述があり、この部分などは投資信託や変額保険なんぞ今後も
一切買わないぞ、と読者が決意を固める材料にはなるかもしれない。
あと、個別銘柄の選択法として取り上げられている銘柄の一つは、
著者の運用期間にベンチマーク(TOPIX)とほぼ同じリターンしか
あげていない。こういう銘柄を取り上げるのは自慢話としてなら
随分間が抜けているが、経験年数の長いファンドマネジャーに
とっても、銘柄や売買タイミングの選択は難しいものなのだ、と
いう生きた教材程度にはなるだろう。このあたり、著者の謙虚な
お人柄を垣間見ることができるように思われる。
評者が他の本でファンドマネジャーの業務内容について既にある
程度知っていたからかもしれないが、この本に類書を上回る魅力は
残念ながら見いだせなかった。よって星三つにさせてもらいます。